一滴の光
この間、久々に目薬を買った。
早速、ここ最近ずっと濁って、ピントの合っていなかった瞳に一滴、落とす。
しばらくしてから、目を開けると、そこには今までの濁った世界が嘘のように、目の前にはクリアな世界が広がっていた。
気乗りしなかった仕事も、
自分のことなんて考えてくれていないと思っていた同僚も、
自分勝手だと思っていた上司も、
なんでいつもこうなんだろうと嫌いで仕方なかった自分も、
全部、はっきりと見えた。
今、私の目の前にあるは、間違いなく、
— "やさしい世界" だ。
それに気付かせてくれたのは、君で、そんな君の大好きだった笑顔を、ふと思い出す。
同時に、私の目からは一筋、目薬が流れた。
もしかしたら、これからもまた
この世界の全てが敵のように思え、濁って見えることがあるかもしれない。
でもそのときはまた、こうして目薬をさせばいい。
何度でも、何度でも。
きっとそうすればまた、この世界の美しさ、やさしさ、に気付くことができる。
そうやって、何度でも繰り返せばいい。
そんなことを考えながら、久々に買った目薬をポケットにそっとしまった。