染めたての髪
本格的な新年度に向け、パンフレット類を一新することになり、パソコンとにらみ合う日々が続く。数日前、塾長が箇条書きにしてくれた塾のコンセプトと、ヒアリングした想いを形にしていく。
こうやってパンフレットやチラシ作りに追われ、デザインや見せ方を考えることに没頭していると、時々、自分の職業がわからなくなる。
けど、そんな自分も嫌いじゃない。
「人の想いを知り、それを形にし、伝えていく」その一連の作業が好きだし、得意だとも思う。それに、職業名に囚われた生き方はしたくないと、ずっと思ってきた。
「なんだ。全部、叶ってるじゃないか」
ずっとそこにいたのに、つい最近まで気付かなかった理想の世界に気付き、少し肩の力が抜けた。
なにやら騒がしくなった入口に目をやると、そこには、少し明るすぎる髪を触りながら恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑う君がいた。
「いや、本当はこんなつもりじゃなかったんですよ!」
他の先生に髪色についてつっこまれて、必死に弁解する君の顔は、やっぱり笑っていて、すごく幸せそうだった。
何度も、見たくない結果を突きつけられ、明るかったはずの君から笑顔が消えた。
友達もどんどん塾に来なくなり、不安をいっぱい抱えながら、毎日やってきていた。
それでも目が合うと、無言で微笑んでくれた。
色んな君の姿や想いが一気に蘇ってきて、君とどんな話をすればいいのかわからなくて、逃げるようにパソコンに目を向ける。
新しい季節は、もうすぐそこまで来ている。
私も君も、またここからはじまる。
願うことはただ1つだけ。
君が君らしく
ときには涙を流すこともあるだろう。
それでも
笑顔で生きていけますように。
ただ、それだけ。
新しい世界へ、旅立つ君たちへ。
「ありがとう。そして、おめでとう🌸」