ラブソングなんて、いらない。
いつからかさっぱり聴かなくなったラブソングが聴きたくなって、
久々の美しい旋律に浸りながら、これを書いている。
今日は、「君と最後の日」
ついに来てしまったこの日に、見えない未来に、
それでも、いつもと何一つ変わらない君に、
不安を感じてしまえばきりがなかった。
それでも、ずっと前から
今日という日を、君と過ごす時間を
ちゃんと楽しもうと、幸せを感じようと決めていた。
いつもと変わらず、
冗談を言い合いながら過ごす時間はあっという間で、幸せで、
それでも時々見せる、何かを言いたそうな君の目だけは、
どうしても、ちゃんと見ることができなかった。
朝、まだ薄暗い朝焼けの中に向かう背中。
何度もこうしてこの背中を見送ってきたはずなのに、
もう2度と会えないような気がして、思わずその背中に抱き着いた。
そして、軽くキスをして、
「いってらっしゃい」
笑顔でそう、君に言った。
「いってらっしゃい、なのかな」と君は少し困った顔で「またね」と、微笑んだ。
始まりから普通とは違う2人だったし、
私は恋愛がすごく下手だったから、
ラブソングやネットに溢れる誰かの恋愛と比べてしまえば
不安が募るばかりで、そうやって何度も君を困らせたけれど
それでも、幸せな日々だった。
あの時「いってらっしゃい」と言ったのは、
また君に「おかえり」と笑顔で言えるようにって
そんな私の小さな願掛け。
誰もが共感できるような
羨ましがるようなラブソングのような恋ではないけれど
それでも、いい。
そう思えるほど、強くなれたから。
君を、好きになれたから。
私はきっと大丈夫。
私たち2人もきっと、大丈夫。
今度、君に「おかえり」を言うときには、
あの時、君が言いかけた言葉も
きっとちゃんと受けとめられる。
だから、今日は「最後の日」なんかじゃない。
ラブソングには、なれない2人の「新たな始まりの日」で、
そして、私がラブソングを聴けるようになった日。